東京高等裁判所 昭和34年(く)91号 決定 1959年9月28日
少年 K(昭一六・一一・二生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
申立人らの抗告理由の要旨は、
申立人らは少年Kの父又は母であるところ、同少年は昭和三四年八月二八日横浜家庭裁判所において、窃盗未遂、強盗、外国人登録法違反保護事件について中等少年院に送致する旨の決定を受けたのであるが、申立人らは右少年に対して再度にわたって指導の機会があったにもかかわらず、それを十分に果し得なかつたことを反省しているのである。しかしながら申立人らは以前から子供を連れて朝鮮に帰ることを考えていたところ、このたび帰国問題が解決して一一月には船が出るということであるから、その頃には是非帰りたいと思つているが、同少年が少年院に送られることになつては申立人らは帰るに帰られず、途方に暮れている。帰国準備のこともあり、同人を連れて帰国して再教育したいと思つている。帰国こそ同人の更生に最もよい方法と思うので原決定を取り消されたく本件抗告に及んだ次第である。というのである。
よつて審究するに、本件保護事件記録及び調査記録によれば、少年は昭和三三年五月三〇日横浜家庭裁判所において窃盗などの保護事件について在宅試験観察の決定を受け同年一一月一四日横浜保護観察所の保護観察に付する旨の決定を受けたものであるが、その保護観察の状況は不良を続けて昭和三四年五月二日より強盗などの本件非行を重ねるにいたったものであつて、保護者及び担任教官らの同少年の保護についての関心もさることながら、その非行性は在宅保護をもってはとうてい矯正を期しがたいものと認められるので、同少年に対する保護処分としては中等少年院に送付することが最も適切と認められ、原決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認又は処分が著しく不当であるとみるべき事由は発見せられない。もしそれ同少年の帰国問題にいたっては収容施設を退院又は仮退院後における少年自身の自由意思によつて決定せらるべき事柄であつて、現在保護者らが同少年を連れて帰国したいからといつて、このことだけで原決定を取り消す事由とはならない。であるから本件抗告は理由ないものであつて棄却するの外ないものである。
よって少年法第三三条第一項を適用して主文のとおり決定する。
(裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 渡辺好人)